営業とは?そしてマーケターという職業とは?

当記事では、営業・マーケターという職業とは本質的にどのような仕事なのか論じます。
またこれらの共通点についても考察を試みます。
目次
営業とは
営業とは、自社の製品やサービスによって顧客の課題を解決したり、満足を提供したり、ニーズに応える仕事です。
営業パーソンは、人間が「買う」ということを知っています。
同時に「買わない」ことも知っています。
そのような人間心理への理解や解像度の高さが重要となります。
ただやみくもに売り込むのではなく、4つの力を同時に働かせる仕事です。
ターゲットを元に営業戦略を立てていく「戦略」、目標達成に向けて効率的に組み立てる「計画」、そしてやることを決めれば数字を見ながら行なう「行動」「実績管理と見直し」。
そんな営業という仕事の性質について、改めて一つずつ把握していきましょう。
営業という仕事を、種類ごとに整理する区分
営業の仕事は幅広く、それらを区分けするには様々な切り口が考えられます。
まずは営業の全体像を整理し、あなたが経験してきた営業がどのような位置付けかを把握しましょう。
個人向け営業と法人営業対象
個人向け営業では、例えば保険、金融証券、不動産など、一般的に売る難易度が高い商材を扱うことが多いと思います。
それを乗り越えて成果を上げてきた営業パーソンは、見込み客を発見する力、ニーズを引き出すヒアリング力、ベストを提案する提案力、そしてニーズに応える力が鍛えられているでしょう。
一方、法人営業は千差万別、様々です。
業界、業種、担当顧客によっても全く違います。
商談相手が主に社長である中小企業向けの営業か、何人もの関係者を説き伏せて協力を取り付けるエンタープライズ営業か。
あなたが担当してきた営業対象はどんな人たちだったでしょう?

新規営業とルート営業
新しい顧客を開拓する新規営業は、営業の花形と言われます。
全く接点の無いターゲット顧客にアプローチし、アポを取り付け、話を聞いてもらい、ニーズを喚起し、粘り強く交渉し受注します。
既存顧客を維持・深耕するルート営業では、新規営業とはまた異なるものが要求されます。
既存顧客を定期的に訪問し、フォロー、サポート、新商品の紹介などを行ないながら新たなニーズを引き出します。
人間関係の構築、相手のニーズを汲む力、競合が入り込まないように対策する力、顧客社内の取引シェアを増やすアクションなど、企業の生命線としての継続接点と言えます。
何を売るか?
売り物は何だったのかということも、棚卸しに重要なポイントです。
よく言われる区分は、有形商材と無形商材という区分です。
有形商材は、機械・建材・食品などの「形のあるモノ」を扱います。
顧客が実際に見たり触れたりすることができます。
一方、無形商材は、ソフトウェア・保険・教育サービスなど「形のない商品」を扱います。
特にオーダーメイド商品の営業の場合、受注には高度な営業スキルが求められると言われます。
有形・無形、いずれにしても、商品知識の豊富さ・深さ、ターゲット顧客に対する解像度の高さは成果を上げる上で重要です。

特異な営業スタイル
営業は属人性の高い仕事であり、一人一人スタイルは異なります。
- 顧客と関係性を築き、モノを売る前に自分を売る営業
- 商品に誰よりも詳しく、聞かれたことは即答できる知識量の豊富な技術営業
- 顧客の悩みに寄り添い、深くヒアリングを行ないベストな問題解決を提示するソリューション営業
- 顧客がまだ気づいていない課題やニーズに気づかせて付加価値を最大化するインサイト営業
営業の仕事の流れと役割
これまで紹介したそれぞれの区分の中で、さらに下記のようなプロセスや役割があります。
実際に営業として、何をどこまで担っていたのかを、全体像を見ながら考えてみましょう。
営業戦略
企業組織であれば、誰かが営業戦略を考えているはずです。
どこの、どんな、誰に、何を、どう売るか。
市場を分析し、顧客を理解し、競合を学び、自社が勝てる切り口を考えます。
役員会レベルで決める戦略もあれば、営業部門が決める戦略もあります。
自由な動き方が許容される会社であれば、製品担当者が自ら戦略を考えて動く場合もあります。
営業計画、プロセス管理
営業が仕組み化されている場合、厳密な計画と営業プロセスが組まれている場合があります。
SFA/CRMツールへの入力や営業日報により管理し、売上・利益計画を管理します。
営業マネージャーが大計画を立ててそれを各担当者に目標値として割り振るパターンが多いですが、自分の目標策定や計画策定、営業プロセス自体を自分で考えるということをしている人も居ます。
実行
戦略と計画に沿って実行する部分です。
営業職として働いているのであれば、皆この実行を担っているはずです。
- ターゲットリスト作成
- アポイント取得
営業で培われる能力
営業のプロセスには、戦略・計画立案・行動・実績管理と見直しのサイクルが含まれています。
そのため営業という職種を通して、PDCAサイクルを動かす力や数字で組み立てる力が養われます。
マーケターとは
マーケターとは、世の中に顕在化・または潜在しているニーズを満たすための製品やサービスに、興味を持たせて購入したいと思わせる仕組みを作る仕事です。
見込み客を発見(リード確認)し、リードを育成します。
また経営部門からのニーズと、営業部門からのニーズも把握し、連携していく役割もあります。
人間の「買う」や「知りたい」などの心理に基づいたマーケティング活動を行います。
そのため人間心理への解像度の高さが重要です。
ここではマーケターという仕事の性質について解説します。
マーケターの仕事の区分
営業の仕事の区分と同様に、それぞれの軸でマーケターの仕事を区分けして見ていきます。
対象
営業と同様、マーケターの対象にも「個人(BtoC)」と「法人(BtoB)」があります。
一般消費者を対象とするか、企業や団体を対象とするかによって、マーケターの動きも異なります。
さらに法人における「SMB」と「エンタープライズ」の違いは、マーケターの動きにも大きく関わります。
エンタープライズであればリード獲得だけでは足りず、営業をいかにサポートするかが重要なポイントになります。
フェーズ
フェーズという軸では、「新規リードの獲得」と「既存リードの育成/ニーズ顕在化の検知」に分けられます。
新規リードの獲得では、マーケティング戦略・計画立案に基づいた施策を通して、見込み客の発掘を行います。
具体的には、Webや広告を活用した顧客との接点づくりが挙げられます。
一方、既存リードの育成/ニーズ顕在化の検知では、Webサイトの活用が有効です。
既存リードに対してコンテンツ発信を行うことで意欲向上に繋げたり、既存顧客のWebサイト上における行動分析をもとにニーズを検知したりすることが可能です。
商材
取り扱う商材という軸では、「スペックで売る商材」と「問題解決で売る商材」があります。
スペックで売る商材の場合、ユーザが判断に必要とする情報をまず提示する必要があります。
Webサイトや広告を活用し、ユーザとの接点づくりや提供する内容の充実を目指します。
一方、問題解決で売る商材の場合、営業パーソンによるアプローチを活かした戦略が必要です。
まずはリードの育成・獲得を行い、商談における営業の付加価値を作り出すことが重要です。
方法
マーケターが使う手法という軸では、「SEO」、「Web広告」、「SNS」、「DM」、「オフライン広告」、「外部媒体」などがあります。
SEOは検索エンジン最適化のことです。
GoogleやYahoo!などで、ユーザが自社のWebサイトと合致するニーズの検索ワードで検索した際、Webサイトを検索結果の上位に表示させることで接点をつくります。
Web広告はGoogle広告やYahoo!広告など、検索エンジンやWebサイトに掲載される広告です。
ターゲットを絞って配信することが可能です。
InstagramやXなどのSNSメディアを活用することもあります。
広く認知を獲得し、潜在顧客へのアプローチとしても用いられます。
DMは電話やメールなど、顧客へ直接行うアプローチです。
既存顧客へDM発信することで、リードの育成としても活用できます。
オフライン広告はテレビCMや新聞広告など、インターネットを介さずに発信する広告です。
幅広い層での認知獲得に効果的です。
外部媒体はテレビ取材や雑誌掲載など、自社からではなく第三者からの情報発信のことです。
顧客にとって、客観的で信頼できる情報になります。

マーケターの仕事
これまで紹介したそれぞれの区分の中で、さらに下記のようなプロセスや役割があります。

プロセス
第一に、商材を理解し売り方を考え、ターゲットとなる業界・分野において、見込み客を発見します。
発見した見込み客に、様々な方法を活用して情報を届け、興味を持たせます。それによりリード獲得や購入に繋がります。
ここで終了ではなく、獲得したリードを育成し、リピート購入を促すためのマーケティング活動を継続します。顧客にポジティブなイメージを継続して伝えることが重要です。
役割
マーケティング戦略の構築、計画立案、施策・実績管理を行います。
その過程で、経営と営業を繋ぐ存在です。またWebを介して顧客との接点となる役割もあります。
マーケティングで培われる能力
戦略・計画立案・行動・実績管理と見直しを行うマーケターは、PDCAサイクルを動かす力や数字で組み立てる力が養われます。
それに加えて、人間の「買いたい」「知りたい」などの欲求がどのように生まれるのかといった、人間心理の理解・人間の解像度の高さがキーとなります。
営業とマーケターでは何が違う?
ここまで営業とマーケターについてそれぞれ解説しましたが、業務のプロセスや役割など似ている点が多いと感じたのではないでしょうか。
では営業とマーケターを比較した際の違いについて、考察していきましょう。
一言で表現すると、営業とマーケターはビジネスの中で担当するフェーズが異なるといえます。
具体的に、マーケティングは認知、興味関心、知りたい/欲しいなどの欲求を生むための活動を担います。
一方営業は、ニーズの有無を確認し、アポを取り、商談を行ない、提案し、受注します。さらに受注後は納品管理や継続サポートも担います。
このような全体像の中では、マーケティングの後工程に営業があります。
さらに営業がマーケティングを担うこともあり、例としてテレマーケティング、飛び込み営業、展示会営業、DM送付などが挙げられます。このようなアナログな手法で行なわれるものもマーケティングです。
営業経験の棚卸し
営業からマーケターになることを目指す際、どのような経験やスキルが活かせるのでしょうか。
ここまで解説した通り、営業とは広範にわたる職種です。
そのため、営業といっても「どのレイヤーから担っていたか」により活かせるスキルや評価される経験は異なります。
そう考えるとマーケターの仕事に近しい、「市場分析」「狙うターゲットの絞り込み」「どうアプローチするかの戦略立案」などの業務しか活かせないのではないか、と不安になる方もいるかもしれません。
若手の営業パーソンは、営業プロセスの自己管理と実行をメインに担っている方も多いと思います。
確かに営業戦略や計画などの業務は、マーケターとしても強い武器になるといえます。
しかし、営業の実行部分の経験だけでも、マーケターの仕事に活用することは可能です。
また分野専門性という観点もあります。
営業職を通して、特定の業界・業種・分野に関する知識経験を蓄積してきたはずです。それらは「中に居なければ分からないもの」であることが多く、マーケターとしてのアドバンテージになります。
ほとんどのWebマーケターは、「Webから」業務に入っている実情があります。そのため実際の業務を知らないことも多いのです。
営業を経験したあなたにとっての「当たり前」は、営業を経験していないマーケターにとって実は「知らないこと」なのです。
そこで顧客を見て、ビジネスを見ていたこと自体があなたのマーケターとしてのキャリアの差別化になり、説得力になり、付加価値になります。
まとめ
営業とマーケターという職業は、仕事の本質は同じといえます。
違いとしては担っているフェーズの差があげられ、マーケティングの後工程に営業があります。
しかし実際には、営業もマーケティングの側面が大きく、業務が重複することもあります。
マーケターの特性として、デジタルやインターネットを活用した手法を主に用いるといえます。